「Viva Video ! 久保田成子」展 – 国立国際美術館

§ 海外で活躍した 日本人女性アーティスト久保田成子

久保田成子さんというビデオアーティスト
私は今回の展覧会の案内で初めて知りました。

1960年代の前衛芸術運動「フルクサス」
日本人ではオノヨーコさん、草間彌生さんなど
この芸術運動に関わられていた事で有名ですが、

久保田成子さんも体を張ったパフォーマンスや芸術運動の記録など、
多岐にわたる作品を制作して主にNYを拠点に活動されていたようです。

特別展:鷹野隆大「毎日写真1999-2021」と同時開催です。

「Viva Video ! 久保田成子」展では
そんなパワフルな日本人女性の海外での活躍を
作品を通して体感することができます。

   特別展「Viva Video! 久保田成子」展
場所大阪中之島 国立国際美術館
期間2021年6月29日(火)〜9月23日(木)
鷹野隆大「毎日写真1999-2021」同時開催
※開催内容は変更する場合がございます。
詳細は公式HPか施設へご確認をお願いします。

※展示室内は作品によって撮影可能でした。

§ アーティストの交流から生まれる作品

何よりも気になっていたのが彼女の交友関係。

「フルクサス」に参加した他のアーティストとの交友。

生涯のパートナーである
ビデオアートの先駆者ナムジュン・パイク氏との出会い。

そして敬愛するダダイズムのアーティスト、
マルセル・デュシャンとも接点があったようです。

交流から生まれる彼女の作品からは
他のアーティストの息吹も感じられます。

展覧会前半のビデオ作品は記録的要素が強いものが多いです。

前衛芸術の歴史的瞬間を肌で感じれられる映像もあるので、
気になる方は映像を見る時間を考慮して
ゆっくり鑑賞されることをおすすめします。

§ デュシャンへのオマージュ作品

彼女は記録媒体としてのビデオから一転して、
「ビデオ彫刻」という表現を開拓します。

現代アートでは作品に映像が使われますが、
彼女の作品は「彫刻」でもあるので
映像だけではなく「物体」として成り立っています。

それはマルセル・デュシャン
「レディメイド(既製品の作品)」の発想を
受け継いでいるのかもしれません。

そして彼の作品へのオマージュが
ダダイズム好きにはたまりません。

《デュシャン・ピアナ:階段を降りる裸体》をスケッチしてみました。

元々のデュシャンの作品よりも、
映像と具体的な物体を利用することで
より見る側に意図が伝わりやすくなっている気がしました。

また彼女が撮影した、在りし日の
デュシャンジョン・ケージ(作曲家)が
チェスをする姿の作品には感極まりました。

中でも1番心に残ったのは
久保田さんがデュシャンのお墓を訪れた際の
映像と音を墓彫刻にした
《デュシャン・ピアナ:マルセル・デュシャンの墓》

《デュシャン・ピアナ:マルセル・デュシャンの墓》をスケッチしてみました。

パートナーであるナムジュン・パイク氏の
連なるモニター作品とはまた違った形態の複数モニターを使った作品。

デュシャンへの敬愛を感じる、
天国への階段の様な壮大で神秘的な作品です。

”D’ailleurs,c’est toujours les autres qui meurent.
されど死ぬのはいつも他人ばかり”

Marcel Duchamp

デュシャンが墓碑に刻んだ言葉通り、
死んだと自覚するのは本人ではなく他者です。

作品も他者がいなければ生み出すこ事はできないのかもしれません。

§ 進化し続けるビデオ彫刻

哲学的でありながら豊かな発想力で生み出す、
彼女の「ビデオ彫刻」は発展し続けます。

一見、何を表しているか分からないと思われがちな現代アートですが、
ビデオアートは視覚的効果が強いからか大きなインパクトを残します。

《スケート選手》1991-92
はフィギュアスケーターの伊藤みどりさんの
トリプルアクセルがモチーフとなっているそうです。

止まっている《スケート選手》1991-92 をスケッチしてみました。時間帯によって動きます。

人間の動きや限界へ挑戦した時に見える景色を
客観的に捉えるとこのような形になるのやもしれません。

そして、彼女の作品には鮮やかな色使いと
どことなく可愛らしさを感じることができます。

実際の展示場は暗闇の中に
とても色鮮やかな作品が展示されています。

展示作品エリアによって写真撮影は可能でした。本当の作品の色味は華やかです。

光の使い方も独特で重なった光の色が
モダンアートの絵画の様に美しいです。

ビデオという電子的メディアを使っていても
作品から人間味が溢れています。

《韓国の墓》
という幻想的な作品にも現れています。

《韓国の墓》1993 をスケッチしてみました。

韓国ドラマで観たことがある円形のお墓には
カラフルなモニターが付いていて、
原色の採光がお墓を飛び交っています。

そこに映し出されるのは
韓国出身のナムジュン・パイク氏と共に
故郷のお墓参りに行った際の映像です。

日本もNYも、韓国でも
その土地や人々のアイデンティティーに愛着を感じることができる、
そんな彼女の順応性には驚かされます。

壁がないアーティスト・久保田成子さんです。

§ ナムジュン・パイクとの愛

アーティスト同士の愛とは不思議なものです。
パートナーの様々な部分を作品を通して見出すことができるのです。

《セクシャル・ヒーリング》1998

ナムジュン氏が
脳梗塞後のリハビリをしている映像を
エロティシズムの視点から捉えた作品です。

ナムジュン氏は久保田さんのことをブッダ(仏)と想われていたようで、
破天荒な愛の軌跡を2人は著書で残しています。

作品から2人の愛にあてられ、展覧会後に読みたくなり購入しました。

  • 『私の愛、ナムジュン・パイク』
    久保田成子、南禎鎬 著/平凡社

「ビデオアートとは?現代アートは難しい。」

そう思われがちですが深く考えずに、
日本人女性のパワーと愛を体感しに
貴重な展覧会へ訪れる人が増えて欲しいです。

知らないものを知る。
それがいつかヒントになるかもしれません。
そして久保田さんのように
世界へ踏み出す糧になるやもしれません。

   特別展「Viva Video! 久保田成子」展
場所大阪 国立国際美術館
期間2021年6月29日(火)〜9月23日(木)
鷹野隆大「毎日写真1999-2021」同時開催
※開催内容は変更する場合がございます。
詳細は公式HPか施設へご確認をお願いします。

※展示室内は作品によって撮影可能でした。

 ▼同時開催の「鷹野隆大 毎日写真 1999-2021」はこちら▼

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